■悪い円安
2022年(令和4年)4月13日現在、1ドル126円台でドル円の為替が推移している。急激な円安は、輸出企業にとってはありがたい話だが、輸入企業や個人にとっては大打撃となる。
今回の円安は、FF金利(以下、米国金利という)と日銀の政策金利(以下、日本金利という)の差によって、市場の資金が円を売ってドルを買うことで起きている。
また、FRB議長の発言によれば、今後、アメリカ国内のインフレを抑えるためにも、米国金利は少しずつ上げていく見込みである。
一方で、日銀は日本国内のインフレターゲット(2%のインフレ目標)を達成させるために、量的緩和を維持し日本の市場にジャブジャブと円を流しまくっている(※)。
従って、日本金利を上げることは難しい。米国金利と日本金利の差が徐々に開いていくことが考えられる。なので、今回の円安は構造的なものであり、一時的なものではない。
そう考えると、じわじわと生活にも影響が出始める。じわじわと電気、ガスの料金は間違いなく上がる。また、輸入品がじわじわと値上がりしてくるはずである。例えば、輸入食品。輸入食品は間違いなく、今後、値上がりする。
他にも輸入品はどんどん値上がりしていくことが考えられ、新型コロナの影響に伴う貿易の滞留や個人消費の低迷、半導体不足やウクライナ紛争などの影響が重なって、じわじわと経営に影響を及ぼすことになる。
■悪いインフレ
好景気の時には、賃金も上がり、物価も上がる。これが好景気においては必要で、物価だけが上がり、賃金だけが上がらないとなると、これは悪いインフレとなる。悪いインフレは、買いたくても物を買えないと言う現象が起きやすくなり、個人消費の低迷につながる。個人消費は日本のGDPの約53%を占めており、個人消費が低迷すると、日本は景気が悪くなる。
今(2022年)、正にこの状態にあり、賃金が上がらないのに物価だけが上がるという現象が起きている。
政府による賃金上昇のための税制優遇政策や少子高齢化(団塊世代がいよいよ本当の意味で引退する時代に入ってきた)による生産者労働人口の減少(働いていない専業主婦を生産労働人口に組み入れる政策も良い意味(働いても良いと思う働いていない専業主婦がいなくなってきた)で終わりを迎えてる)など、賃金が上がる要素はそろってきてはいる。
しかしながら、日本の労働制度の規制緩和や労働市場の流動化が起きない限り、劇的に賃金が上昇するとは思えない。なので、賃金の上昇スピードよりも物価の上昇スピードの方が上回る現象が発生すると思われる。
■悪い円安、悪いインフレ時代のアトツギ
このように新型コロナウイルスの経済経営への悪影響、ウクライナ紛争、悪い円安悪いインフレと重なると、内需型の企業を中心にかなり苦しい状況が続くことが予想されます。しかし、文句を言ったところで始まりません。経営者、アトツギなら、このシーンをどうにかして乗り越えないといけません。
1つの解決方法は、越境ECです。去年おととしに比べれば海外にも行けるように徐々になってきましたが、しかしながら、海外進出を躊躇無くやれるレベルまで海外の状況が戻ってきてるわけではありません。なので、自分が海外に行かなくても海外へ物が売れる越境ECは1つの答えです。物を売るだけでなく、受託生産やサービスを売るのもいいでしょう。
また、他には、新形態への展開もいいかもしれません。例えば、飲食店であれば、キッチンカーでお客さんの近くまでこちら側から出向く、と言うやり方もいいかもしれません。美容室であれば、出張カットとかいいかもしれませんし、BtoBならば、売り込み先の業種を形態を変えて目新しくして付加価値をつけてやっていくのもいいかもしれません。
このようにアトツギは、アイディア+行動+熱意でこの悪い円安、悪いインフレの時代を乗り越えていく術を考えていく必要があります。
※日銀は、量的緩和をすることで市場、つまり、銀行と株式市場(証券会社等)にお金をどんどん流している。また、銀行にお金が滞留しないように、日銀が短期的に銀行に貸すお金をマイナス金利にして、銀行が一般社会にお金を流すように仕向けている。しかしながら、銀行は融資という形で一般社会にお金を流さないといけないのに、銀行の貸出残高はあまり増えていない。特に2021年は貸し出し残高が減る月があったりもする(新型コロナの政策によるものとは思うが)。銀行が一般社会にお金を流さないから、一般社会での通貨供給量が増えず、良い意味での物価が上がらない(今の物価上昇は日銀の政策によるものではなく、新型コロナの影響による物流の滞留や半導体不足、ウクライナ紛争等の影響による海外発の悪いインフレ)。これは、2つの原因があると私は思っている。1つは、銀行員の悪い意味でのサライーマン化。リスクを絶対にとらず、100%の安全をとるから。また、その原因の1つにもなっているとも思われる財務省や金融庁による金融機関への引き締めによるものだと思う。日銀は一生懸命、景気浮上のための施策をやっても、政治や行政がそれとは真逆の政策を実行している。