2023.02.26

利他の精神とは

昨年、亡くなられた京セラの創業者、稲盛さんの言葉によく「利他の精神で」という言葉が出てくる。豊田章男社長も新入社員に利他の精神でと言葉を贈っている。これは、素直に考えれば私心は捨て他人の為に何かをして差し上げるということだ。

言わんとすることは、分からなくもない。しかし、これを実践できてる経営者、アトツギがどれほどいるだろうか?

例えば、親や兄弟、友達やパートナーなどに何かしてあげて喜んでくれたら嬉しいと感じる。

それを横展開すれば良いだけの話しだ。仕事を通じてお客さんをはじめとするステークホルダーに喜んで貰う事ができたら、嬉しいと感じる事ができる人間になること、それが「利他の精神」ではないだろうか?

そう、親兄弟、友達やパートナーなどに出来るんなら、仕事を通じて目の前にいるお客さんやステークホルダーにも喜んで貰えるように頑張ることで、自分が楽しくなる、そういう考え方をすれば良い、ただ、それだけだ。

しかしながら、これができてる、もしくは、考える事ができる人間が世の中、あまりにも少ない。いや、減ったという方が正しいのかもしれない。

私はことあるごとに、この話を友達やスタッフにするのだが、なかなかこの事を理解できる人が少ないことに気付いた。

マスコミや学校教育の問題が大きいと私は思っているが、自分の損得ばかり考え、他人の幸せが自分の幸せと感じられる人がどんだけ少ないことか。

もちろん、それが全て正しいとは言わない。だがしかし、昔の良きニッポンには地域住民、ご近所さんと程よい関係で地域の人たちと共に生きるという時代があった(もちろん、度が過ぎるとうざく感じてしまうが笑)。

最近のお年寄りでさえ、この事を忘れ、西洋の「個」の価値観が強くなり、権利の主張ばかりが目立つようになった。

これでは、自分の損得ばかりを考えるようになり、お隣さんと共に幸せになろう、ご近所さんと共に成長していこうという、身近な人たちとは言え、他人と共に幸せになっていこうとする、その価値観が今の日本にはなくなってしまったのだ。

親兄弟や友達、パートナーなどに何かしてあげて喜んでくれたら、自分も嬉しくなる。これを横展開し、仕事を通じて、ステークホルダーの皆様にも喜んで貰い、自分も嬉しくなったり、ワクワクしたりするようになる。

私は、そんなに難しいことじゃないと思うのだが、これを難しいと思ったり、何でしないといけないの?と思ったりする人がなんと多いことか。

そう考えられなければ、仕事や組織の人間関係において、不平不満ばかりが募ることになるのではないだろうか。自分はこんなにしてやってるのに何で会社はしてくれないのか?上司は見てくれてないのか?とか、仕事が面白くないとか、そういう不平不満ばかりが募ることになる。

私は人生を唯一、充実させる方法でもあると思う。

別に必ずしもモノやサービスを提供する必要は無い。例えば、アスリートなどは自分がもっと上手になり、その分野で一位になれることを目標にする。では、この場合はどうやってステークホルダーを喜ばせるのか?

自分が上手になったり強くなったりすることで、感動を見てる人に与えることが出来る。夢を与えることが出来る。この場合は、これが何かをして差し上げて、の部分で、アスリートは、そのファンの人達が感動してる姿を見て嬉しく感じられれば、それでいいのだ。

とにかく自分に関わる人を全て喜ばせてみよう。例えば、飲食店に行って店員さんを笑わせてみよう。お笑い芸人のように本格的に笑わせる必要は無い。クスッと笑わせられればそれでいいのだ。

時々、店員さんに噛みつく人がいる。これは、心に余裕がなく、マウントを取ろうとしてることが多いと思うのだが、それでは利他の精神で人を喜ばせようとは絶対に出来ないし、していない。実は私もしばらく前までは店員さんに冷たくあたってしまうことがあった。心に余裕がなかったのと、普段からのイライラをぶつけてただけだった。

先日、態度が少し良くない店員さんがいた。その店員さんに私がこの人を喜ばせて自分も喜ぶ心を実践してみようと思い、大した量ではなかったがお皿を下げるときにまとめて下げようとしてたので、大丈夫ですか?持てますか?と聞いた。店員さんは大丈夫ですと淡々と答えたので、私が店員さんは男性にも持てるでしょ?こんだけお皿を持てるから!としょーもないおやじギャグを言ってみた。そしたら、その店員さんは、クスッと笑い、いやー、男性には持てないんですけどねー!と笑いながら答えた。その後は、店員さんの態度が劇的に変わり、本当に満足いく接客をしてくれたのだ。

こうやって、ちょっとだけ誰かに何かをして差し上げて自分が喜ぶことができれば、人間関係はうまくいく。これが世の中全員に行き渡れば、極論ではあるが、戦争もなくなるはずなのだ。

今回は店員さんを笑わせる事で店員さんに居心地の良さを私が提供して喜んでもらい、私もその後の接客で満足して帰ることが出来たわけだ。

形を変えれば、これが仕事を通じてステークホルダーに小さな幸せを与え、それが自分にも返って来るわけだ。

これを毎日実践すれば、必ず、大きな幸せが自分にも返ってくる。

利他の精神とは、この見返りさえ求めないことだが、そこは聖人ではないので、心の中でいつか大きな幸せが返ってくるんだと信じ、自分に関係する全ての人々にほんの少しだけ幸せを届けていきたいものだ。