実際にアトツギが後を継ぐとなったときの注意点を考えてみたい。
あくまでもアトツギからの目線で考察するので、先代の立場からだと突っ込みたくなるかもしれない。その点はお許しを(笑)
まず、後を継ぐ時には既に先代の会社に入り、取締役等になっていることも多いだろう。流石に入社してすぐ社長になることはまず無いと思われる。
そう考えると、社内でのポジションや人間関係、取引先や銀行等との関係性は出来てるはずなので、この辺は少し端折って考えていくこととする。
1番重要な点をまずは話すことにしたい。それは、株の譲渡だ!税金対策は顧問税理士に相談して貰えればと思うが、株はできればアトツギが社長になる前に7割以上は譲渡されていることが望ましい。
と言うのも、これは私の知り合いの現実にあった話なのだが、アトツギが社長になっ後、先代である父親と弟である専務取締役が結託して、他の取締役に根回しをし、社長を電撃解任させてしまった。
今は経営コンサルタントとして第2の人生とも言うべき道を歩き始められているが、その時は青天の霹靂だったに違いない。
こういう事を防ぐためにも株はできれば社長になる前に七割は譲渡されている方が安心だ。
念の為、何故七割と言っているのかと言う事を補足しておくと、七割あれば(正確には66.67%以上)、重要事項決議案等の拒否、逆に承認が社長判断のみでできるからだ。
そう考えると、やはり、株の譲渡は先代と良く話し、節税も考えて長期対策で行うことが理想的だ。
ただ、先代が7割以上の株を持っている場合は問題ないが、先代の兄妹や親戚が少しずつ持っていて、千代の持ち株割合が7割を下回る時は対策が変わってくる。
基本的には親戚から株を売って貰うしかないのだが、自分の子供を社長にしたいと思っている親戚がいたり、金額が折り合わなかったりと色々と壁が出来上がる事がある場合がある。
こうなると、色々と大変だ。感情的になって売ってやらないと言い出す親戚も出てくるだろうし、親戚の中で派閥ができて、いがみ合う関係になってしまったりする。
こうならないようにする為に、やはり普段から派手な生活を送ったりしないようにし人徳を磨き、あいつなら株を売ってやるか、と、思って貰えるようにしなければならない。
また、誠実にお願いして株を売っていただく事ができるように、粘り強くお願いを続けていく必要がある。
親戚が株を持っている場合は少しややこしいので、戦略的に株政策の戦略は考えておく必要がある。
無事、株を掌握できたら、次に私としてはやって欲しいことがある。それは、社員持ち株会やストックオプションなどを導入して欲しい。
何故ならば、スタッフが株を持つことで、株主総会を開かないといけなくなる(一人株主でも法律上は株主総会を開く必要性がある)。そうすれば、会社の状況や今後の方針を株主の立場から話しを聞くことができるし、アトツギの社長が暴走するのを止める事ができる。また、配当を出して賞与とは別にスタッフを喜ばせることもできる。
実は私も少しずつだが、社員持ち株会を作って、そこに株を譲渡している。ただし、株の構成比率には注意しておく必要がある。単純な株の分割であれば問題ないが、第三者割当増資で社員持ち株会に割り当てしたりすると、アトツギ社長の株構成比率が下がってしまい、最悪のケースでは乗っ取られることも考えられる。
故に、常に七割は株を持ち、これを維持する必要がある。そこは経営者として常に考えておかなければならない。
もちろん、上場を目指すとことになれば話は変わってくるが、代々の後を継ぐ中小企業は私の肌感覚ではあるけど、上場できたとしてもやらないような会社が多いように思う。
このように、株の事については後を継ぐと決めた時から色々と考える必要がある。
少し長くなってしまったので、株の譲渡以外については、また改めて考えようと思う。